性暴力被害者を撮影するプロジェクト「STAND」を通し、支援向上を訴える 大藪順子(のぶこ)さん 市内在住 43歳
痛み越え その先へ
○…アメリカでプロジェクトを始めた2001年当時、性暴力被害者(サバイバー)が顔や実名を出すことは米国でもタブー視されていた。「恥ずべきは加害者。目に見えない檻に閉じ込められた被害者たちが、堂々と表に出てこられたら」。サバイバーを撮影し体験も紹介する取り組みには2年で70人が参加。現在は写真展や講演に各地を飛び回る。
○…大阪府豊中市の牧師の家庭に生まれ育つ。兄の影響で新潟県の高校に進学し3年間寮生活を送った。ホームシックを越えれば「楽しくて。実家にも帰らなかった」と笑顔。世界を見て、という両親の勧めで渡米しコロンビアカレッジでジャーナリズムを学んだ。写真を見る目を養おうと受講したフォトジャーナリズムの授業で、作品が全米2位になったことも。「カメラが良ければいいわけじゃない。大切なのはいかに何を見るか」。卒業後は現地の新聞社の専属カメラマンとして撮影に奔走。性暴力の被害に遭ったのは、そんな充実した日々のさなかだった。
○…「今夜、生きのびなければならない」。生まれて初めて死を感じた。鍵をかけた自宅で就寝中に侵入者に見舞われ、選択したのはその男に従うこと。「これまで築き上げてきた自分が崩れ去った」。3日後に犯人は捕まったが、安全なはずの自宅が恐怖の場に思え仕事中のパニックアタックなど心身の混乱、無感情など鬱(うつ)症状は1年以上続いた。被害後のカウンセラーの「あなたのせいじゃない」という言葉が、後々重みを増して響いた。なぜ自分にこんなことが起きるのか―後に出会った多くのサバイバーたちも、同じように意味を見出そうとしていたという。「辛い体験をしたからこそ、もっと幸せに生きることができる」。そう信じている。
○…夫と小学生の娘と穏やかに暮らす。日本のサバイバーの撮影や行き場のない人の居場所づくりなど、構想は膨らむが「娘が小さいから家庭が優先」。柔らかな母親の表情で微笑む。
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