「世間では『被災者の自立』を訴える声も多くなっているが、仮設住宅での暮らしは身体への負担が大きい。まだ支援は必要」―。震災直後から被災地での医療支援に携わる、医師の岩井亮さん(50)は「現地で感じている現状と行政発表や報道との間には大きなギャップがある」と話す。
2011年5月から3カ月間、被災地で医療支援を行っているNPO法人ジャパンハートの活動に参加し避難所での医療支援に従事した。阪神淡路大震災のときも現場に駆けつけており「とにかく『何かしたい』という気持ちだった」。避難所が解消し一旦は現地での活動を終えたが、阪神で目にした仮設住宅の寒さや狭さ、プライバシーの低さを考え、徐々に「辛い状態だろう」との思いが強まった。ジャパンハートに相談し、紹介された医師を介して宮城県気仙沼市のボランティアコーディネーター、村上充さんと出会った。
村上さんの調整のもと、12年5月から隔週日曜に3カ所の仮設住宅に通う。土曜の診療後に自家用車で現地に向かい、日曜の深夜に帰宅する生活も、19日の訪問で74回を数える。現地では、気仙沼市医師会の承諾を得て約40人の健康相談や血圧測定などを行う。当初は看護師ら2、3人だったが、現在は全国から歯科医師や整体師らも参加し、幅広い支援を行っている。
山間部の仮設住宅では独居高齢者が7割を占め、全体の4割は車を持っていない。「もともと医療機関が少ない地域。病院に通うのも難しい」。被災して経済的にも厳しい住民にとって、受診料や交通費も大きな負担。痛みなどを口にはしないが、血圧を測ると高い人が多く、病気が見つかった人もいる。「身体は正直。痛みやストレスは、目に見えないから気づかれない」
「復興」の言葉が広がる現状に違和感を抱き「『待っていた』という声があるから行く。医療のない不安感を取り除くだけでも意味がある」と話す。終わりは見えないが、「田舎に帰る感覚」で支援を続けていく。
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