4月から学校法人トキワ松学園横浜美術大学の学長に就任した 岡本 信明さん 目黒区在住 64歳
道ひらく舵取り役
○…大学の母体となる学校法人トキワ松(まつ)学園は、今年創立100周年。昨年理事長に就任し、今春から学長を兼任する。「伝統ある学校の経営を任せてもらえる。非常に名誉」と表情を引き締める。学長になる前に大学周辺を歩き、どんな学生がいるのか見て歩いたという。「おもしろそうだな、と思ったんだ」と屈託なく笑う。
○…生まれは名古屋市。少年時代はまだ野原や川が身近にあり、生きものが大好きだった。遊びはもっぱら公園の池での魚とり。「ビンにパンを入れて仕掛けるんだ。水槽なんかないからとれたら庭に池を掘って、何とか生かそうとした」。小学生の頃は体育分野で愛知県から表彰されたことも。中庸であれ、という母の教えのもと、のびのびと育った。「真ん中にいなさい、という一つの哲学だった。勉強しろ、とも言われたことがないね」と飄々と話す。
○…「日本の養殖ヒラメの三切れに一切れ、つまり30%は私の特許で作っている。これはちょっと自慢」と破顔する。専門は水産学。東京海洋大学の学長を務め上げ、学会賞など多数の受賞歴を持つ魚病研究の第一人者だ。恩師や目をかけてくれた人の顔に泥を塗りたくない、というのも信念の一つ。今も忘れないのは進路を決定づけた高校3年の三者面談。担任教師の「受かりません」の一言で火が付き、残り5カ月を一心不乱に勉強して東京水産大学(当時)に現役合格。「カチンと来てね。でもあとから『発奮する子だから言ったのよ』と言われて。出会う人には恵まれているんだ」
○…これからの時代、美術やデザインは自己表現だけに留めていてはダメ、と語る口調に熱がこもる。「創造性を社会との接点の中で発揮する。それがクリエイティブ」。4年制の美大になって6年という新しさにも可能性を感じる。「美術を産業化することが必要。この大学だからできる」。新たな舵取り役として、未来への道を見出していく。
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