イタリアで行われたグランプリ大会・男子3m板飛び込みで、日本勢初優勝した 坂井丞(しょう)さん 日本体育大学在学 19歳
一瞬にかける静かな情熱
○…プールにせり出した飛び板から跳ね上がり、空中で回転しながら、水中へと静かに入水する「板飛び込み」。わずか2秒程度で勝負が決まり、計6回の総合得点を競う。屋外会場だった今回のイタリア大会。決勝は夕方にまでもつれ込んだ。普段から日体大の屋外プールで雨風かまわず、夜遅くまで練習に励む日々が自信への後押しになった。「屋外に慣れていない、ほかの選手にリードできる」。その静謐(せいひつ)な心境を映し出したかのように、水面もしぶきを上げることなく王者を迎え入れた。
○…相模原市出身。両親は日体大の飛び込みコーチ、姉と妹も選手という、まさしく飛び込み界のサラブレット。お腹の中にいる頃から連れられた日体大のプールは遊び場であり、家族の場であり、もはや育った場。「ゆくゆくはコーチとして日体大へ恩返しをしたい」。こんがりと日焼けした小麦色の肌に似合う、爽やかな笑顔が印象的だった。
○…宙に高く舞い、手先から足先まで真っすぐに、しなやかに入水する美しさに魅せられる。入水感覚に優れ、3回転半しながら、わずかなズレを修正。この考える隙もない一瞬の作業は、まさしく天性のもの。しかし、そんな飛び込み界を牽引してきたエースでも、さすがに「10mの高飛込みは怖いです」とはにかむ。
○…2月のワールドカップでは、海外自己ベストを打ち出し、7位と大健闘。ロンドン五輪出場枠を獲得したものの、日本水泳連盟の選考基準や、世界選手権のミスなどによって切符を逃した。誰しも信じていた五輪出場。「もう、ショックが大きすぎて言葉が出なかった」。叩きつけられた現実と悔しさは、今回のイタリア大会にぶつけた。「五輪選手に選ばなかったことを見返してやりたい―」。いい意味で緊張の糸が切れ、のびのびとした最高のパフォーマンスを見せつけた。「心はすでにリオに向かっています」。ぶれること無く、静かに闘志を燃やしている。
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