先月16日の「WBC世界フライ級戦」で世界チャンピオンになった 五十嵐 俊幸さん 千草台在住 28歳
不屈の”魂”で世界王者
○…前へ、前へ。とにかく真正面から立ち向かい続けた世界戦。相手のパンチをかわし、着実にポイントを取る普段のスタイルとは違っていた。後半戦の記憶がないほどの未経験の強力パンチを受けるも、「絶対世界王者になるという気持ちが前に出させた」。2対1の判定勝ち。この勝因は技術でも体力でもないと言い切る。「応援してくれている人のために、必ず世界王者になるという責任と気力があったから」。左目に絆創膏(ばんそうこう)を残し現れた取材当日。少年のような笑顔が印象的な世界チャンピオンだ。
○…秋田県出身。高校1年の時、友人に誘われボクシング部の扉を叩いた。喧嘩もしたことがなかった少年がサンドバックを打った瞬間、闘争心の血が騒いだ。練習相手の部員は48kg級の自身に対し57kg級や60kg級ばかり。それも県内一のボクシング強豪校。この逆境の環境が世界王者へ導く原点となった。「ボコボコにされながら強い相手に立ち向かう恐怖心が消えていった」。3年生でインターハイと国体の2冠達成。ボクシング日本一の東京農業大学進学後、アテネ五輪選手にまで上り詰めた。
○…起伏に富む藤が丘は絶好のランニングコース。世界戦は1カ月で13kg減量。元気のチャージは昔から”すっぽん”だ。2年前、出産のため妻が入院。病室から「すっぽん」の看板文字が見えた。「近所で食べられるなんて嬉しくて」。以来、藤が丘の料理店「田乃中」の常連に。店では地元応援団が結成され、息子のように可愛がられている。
○…名門「帝拳ジム」に所属。同じジムで、世界フライ級チャンピオンを5度防衛した故・大場政夫の魂を受け継ぎ、自身も”真の王者”を狙う。「周りの力が自分の力になる」。グローブをはめ、試合のビデオを見てはパパの真似をする2歳の長男も心の支えだ。目指すは勝ち続ける王者。「これからが本当の勝負。次の目標は防衛戦」。世界王者の戦いは始まったばかりだ。
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