歌手、心理カウンセラーとして「メンタルライブ」を初開催する 松下 可奈さん 美しが丘在住
「七転び八起き」で前へ
○…忘れられない光景がある。2011年3月、東日本大震災直後の、明かりが消えた渋谷の街。「誰もが肩を落としている中で、ストリートミュージシャンの周りだけ活気があって。みんなが励まされて、私も鳥肌が立った」。その瞬間、音楽の力を実感した。学んでいたメンタルケアと音楽を融合させた企画は、この時から温めてきたものだ。
○…山あり谷ありの半生だった。宮崎県都城(みやこのじょう)市の豊かな自然の中で育ち、母の再婚が許せず家出したのは中学生の頃のこと。同じように家庭に反発して集まった仲間と自暴自棄な生活を送った。「無茶ばかりして。みんな寂しかったんだと思う」。いつ死んでもいいという一方、このままじゃダメだとも感じていた。「この人たちの希望の星にならなきゃ」。自分を見つめ直したとき、よみがえったのは幼い頃に抱いた歌手への夢だ。一念発起し、18歳で単身上京。「思う存分やりなさい」と背中を押してくれた母に、親孝行したいというもう一つの夢も持った。
○…その母を22歳で亡くし、音楽を続ける意味を見失ったことも。バンドの解散を繰り返し、やめると決めて趣味のバイク店に就職した。「でも3カ月で倒産しちゃって。諦めないで歌い続けなさい、って母が言ってくれてるのかなって」。音楽活動を再開し、10年の下積みを経てメジャーデビューが決まったのはその直後。テレビやラジオ出演など多忙な日々の先に、今度は燃え尽き症候群という試練が訪れる。ステージに立てず、誰にも会いたくない。引きこもりのような生活から、カウンセリングを受けて少しずつ立ち直った。
○…専門の学校に通い、今は心理カウンセラーやメンタルトレーナーとしても活動中。たった一人でも本当に理解してくれる人がいれば、深い闇に落ちずにいられる、と信じる。「体のマッサージをするように、心のケアも手軽にできたら」。新たな思いを胸に、また前へと進む。
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