オランウータンの保護活動で「エンリッチメント大賞2010」を受賞したズーラシアの飼育員 宮川 悦子さん 東京都在住 50歳
”友人”の元気 そばで支え
○…「嬉しかった」。受賞の気持ちを一言で表す。オランウータンの飼育担当になって5年目。「飼育員は誰しも動物たちのために毎日いろいろな工夫を考えている。その技術の一つが、違う動物園のメンバーたちと一緒に評価された」と言葉に力を込める。一方で「日ごろ長期的な保全活動ができない動物園から、生息地に技術を提供できたことは大きい」と喜ぶ。今回の受賞は、前進も意味する。
○…「動物のそばにずっといたい」という幼少時代からの思いで飼育員を志した。しかし就職活動を始めた当初、体力仕事である飼育員は男性社会。「なかなか仕事がなくて」。めげずに挑戦し、千葉の動物園でアルバイトに。2年ほど務め、開園したばかりの沖縄の動物園に転職した。東京に戻ってからは研究所や協会などでも従事。これまでの道のりを「話すと長くなっちゃう」と笑う。13年前、ズーラシアに就職。ツキノワグマなど日本の動物たちを経て、5年前にオランウータンの担当になった。
○…「オランウータンは、まさに人。知能や記憶力が高くて、感情もある。すごいところは次の行動が予測できるところ」と実感を込める。現在ズーラシアにいるオスの2頭、ロビンは19歳、ジュリーは17歳と人間で言えば20〜30代前半の青年だ。「担当1年目は意思の疎通が難しくて悩みも多かった。それぞれ性格も違うし、彼らも私との相性を見極めていて。日々振り回された」としみじみ。今では「友人や同僚のような関係になれたかな」と笑う。当時の大変さがあったから、今があると実感する。
○…これまで担当した動物の生息地はすべて訪れている。「彼らが本来暮らす環境を肌で感じることは大事」。今回、保護活動でボルネオ島を訪れたことも貴重な経験になったという。「ロビンとジュリーに元気で長生きしてもらうのが夢。そのためには私の努力が必要」。今日も大切な友人のために力仕事に励む。
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