新栄地域ケアプラザでレコードDJを務める 神山 孝三さん 桜並木在住 69歳
幸せ届けるレコード博士
○…高齢者が地域住民と交流することを目的とした音を楽しむイベントが毎月1回、新栄町で開催されている。曲を流すのはミュージシャンでも音楽関係者でもない、ひとりの愛聴家だ。レコードやCD、アンプ、スピーカーなど演奏機器一式を持参し、いつも懐かしのメロディーを届けてくれる。「『いい時間をありがとう』なんて言われると、嬉しいね」と笑みをこぼす。
○…DJを始めるきっかけは、ケアプラザの一枚の募集チラシ。自宅で保有するレコード1271枚とCD900枚を「地域のために生かしたい」と、2年半前から参加している。約1カ月かけて、当日流す20曲を厳選。「お客様を飽きさせないために、曲選びは毎回ギリギリまで悩む」。またレコードをかける前に、曲にまつわるエピソードを熱く語る姿が口コミで広がり、今では多くの人が集う人気イベントとなっている。
○…歌好きだった母が口ずさむ童謡を聞いて育った幼少期。中学に入ると、音楽好きの父がギターやレコードを買ってきた。「家には音が溢れていた」。川和高校3年の時、ビートルズ来日。日本に空前の洋楽ブームが訪れた。以来、ロックやジャズ、クラシックなど、幅広いジャンルの音楽にのめり込み、現在まで興味は尽きることはなかった。歌うことが好きだった母は、昨年他界。「ずっと一緒にいた大切な人を亡くしてしまい、元気をなくした」。絶望する中でも、イベントには必ず顔を出した。「待っていてくれる人がいる。参加者が目を閉じて聴き入る様子や笑顔に励まされた。DJは私の生きがい」
○…大学卒業してから64歳まで写真関係の会社で働いたこともあり、撮影技術は個展を開くほどの腕前。「写真や音楽など、人に何かを伝えることが好き。今後も体の動く限り、まちの方々に音楽で、お役に立てることができれば」。そう話す手には、何度も鉛筆で順番を書き直した曲順表が握りしめられていた。
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