県立公文書館 被災文書、復活を 陸前高田の800冊を修復へ
神奈川県立公文書館(中尾)は、東日本大震災被災地の公文書修復の支援事業「被災公文書レスキュー」に取り組む。被災地の行政文書を復活させ、少しでも復興の手助けをしようと作業が進められている。
同館が復旧作業に取り組むのは、岩手県・陸前高田市の公文書。津波被害を受け市役所業務に使用できなくなった公文書を、再び使用できるようにすることが目的だ。
陸前高田市の市庁舎は4階付近まで津波が押し寄せたため、役所で使用していたほとんどの文書が流されたという。しかし、庁舎裏手の保管庫にあった永年保存文書は流出を免れていたため、修復作業の対象となった。
同館は被災地の公文書が被害にあっていることから協力を表明しており、昨年8月に依頼を受けたという。
作業を行うのは、事業のために臨時雇用された12人のメンバーだ。10月に全員で陸前高田市を訪問。小学校に仮置きされ、現地で乾燥作業が進められていた400冊を運び出して作業がスタートした。12月には同市を再訪。作業が完了した137冊を返却するとともに、新たに400冊を持ち帰った。
作業は手探りゼロからスタート
メンバーのほぼ全員が初めて経験する作業。そのため、一つひとつの文書にカルテを作成し、水分量や汚れの種類・程度、欠損状態などを細かくチェックしている。カルテにはどのような処置を行うかも記載されており、返却する際一緒に渡して今後の保存に生かしてもらうという。
作業は文書の乾燥をはじめ、ホチキス針やクリップなどの金属やカビの除去、紙と紙がくっついたページ固着の解消などで、全て手作業で行われている。
リーダーの木本洋祐さんは「ここまでひどいものを修復するのは初めて。作業は手探り状態でスタートした」と振り返る。当初はドライクリーニングや土砂の除去など、作業に合わせてどのようなものが適しているか、さまざまな道具で試しながら修復を進めていたという。一冊約300〜400枚と分厚い文書。木本さんは「今後起こってしまうかもしれない災害に備えて、作業のノウハウなど蓄積していくことも大切」と話している。
修復する文書は、陸前高田市の条例や予算、都市計画などこれからの復興に必要なものばかり。同館の下元省吾館長は「公文書は陸前高田が存在したという歴史のあらわれ。将来、県民がどのようなことをしていたのかを知るためにも重要」としている。さらに「文書の修復作業までなかなか手がまわらない自治体は多い。被災した文書は膨大な量があり、私たちが請け負っているのはほんの一部。それでも、復興に少しでも役立てれば」と話している。
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