米国育ちの日本人企業家、齋藤ウィリアム浩幸さんによる「夢を実現する力」などをテーマにした講義が、市立都岡中学校(古川三千代校長・332人)=川井宿町=で11月13日に行われた。「全校理科授業」と銘打ち、生徒たちの言語活動や考える力を充実させようと同校で企画。公立校では珍しい試みで、新たな教育の場として期待が寄せられている。
優れた理科教育に取り組む幼稚園や小中学校を支援しようと、「理科教育助成」プログラムを行う公益財団法人日産財団=西区。この助成校に昨年選定された同校の古川校長が今年7月、同財団理事でもある齋藤さんの講義を聴いたのがきっかけで、今回の全校授業が実現した。
東京電力福島原発事故調査委員会で最高技術責任者を務め、投資家や企業のコンサルタントとして国内外で活躍する齋藤さんが、中学生を相手に講義したのは初めてという。「(生徒から)質問が出ればどんどん答えていきたい。自分にとってこれはチャレンジ」。この日は体験談を中心に、質疑応答も交えながら講義が進められた。
1971年に生まれ、アメリカで育った齋藤さんは数学好きの少年だった。10歳のとき、学校教員の勧めで当時最先端だったパソコンを親に買ってもらうと、興味本位で解体して元通りに直したという経験を持つ。「親は激怒したけど、分解したことでパソコンがどういう構造なのか分かった」
大学在学中にソフト開発や販売を行い、04年には米マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツ氏に自社を売却。「仕事の始まりは全て日本の会社が関わった」。次世代に夢を託そうと、翌年から日本に移り、企業の顧問や大学講師として情報発信を続けている。
失敗は必須条件
輝かしい成功体験が際立つが、「イノベーション(革新)には本気の失敗が必要。失敗から学んでいない会社には投資しない」と齋藤さん。生徒からの「どういうときにアイデアがひらめくか」という質問には、「人と話すことが大事。対極の人には自分にない能力があったりするので、日ごろから練習してほしい」と訴えた。
小説家、脚本家が夢という3年の山口純侑(よしゆき)君(14)は「自分と同じくらいの年齢で会社をつくったのはすごい。いろんな挑戦をして作品を書いていきたい」と瞳を輝かせた。理科教員でもある古川校長は「理科好きの底辺は公立中学校。こういう場でこそ、齋藤さんのような第一線の力を見せておきたかった」と力説。「生徒と教員で語り合える、貴重な共通の話題になるはず」と手応えを語った。
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