亡くなった恩師からクラス会費が届いた-。一昨年の11月、瀬谷在住・中峰利和さんのもとに1通の書面が届いた。それは中学の恩師森健先生から送られた「クラス会費として現金を預託する」という遺言書だった。
昭和32年度瀬谷中3年F組卒業生は、昭和61年からほぼ毎年、クラス会を実施。担任だった森健先生も毎回欠かさず出席していた。先生にとっては初の教え子で、年齢差は9歳。会を追うごとにその垣根は消え、いつしか「仲間」になっていった。肩を組んでバカを言いながら、酒を酌み交わした。
一昨年の11月、例年どおりクラス会に参加すると思われていた恩師が、2カ月前に亡くなったとの訃報が。教え子たちは驚き、墓参りへと向かい冥福を祈った。それから約1カ月後、弁護士から中峰さん宛に「生前遺言公正証書」が届く。恩師が中峰さんに託した遺言とは「クラス会費として現金を預託する」というものだった。亡くなった衝撃も冷めやらぬなか届いた書面に「こんなことが世の中にあるのか」と、中峰さんは震えが止まらなかった。自分の身に起きた現実をにわかには信じられず、誰かのいたずらとさえ感じた。実はその書面は7年前に書かれたもので、中峰さんを更に驚かせた。思いもよらぬこの出来事をすぐさま、クラスメート全員に手紙で伝えた。先生の遺志を継ぐ使い道とは――。旧友たちと話し合った。翌年は、皆が古希を迎える年、この機会に1泊で旅に出ることに決めた。
「恩師を偲ぶ古希祝いの旅」は先月11日、無事行われた。例年よりも多い21名が参加し、中には54年ぶりに連絡がつき初参加した人も。友との絆を手繰り寄せてくれた恩師の想いを感じずにはいられなかった。今までとは少し違う雰囲気で進んだ旅は、恩師との思い出や懐かしい話でいつも以上に盛り上がった。「とにかく感動した旅でした。先生もきっと傍にいて、目を細めて微笑んでいてくれたはず」と中峰さんは話した。
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