12月1日に瀬谷公会堂で上映される「39窃盗団」の監督 押田興将(こうすけ)さん 南台出身 44歳
魂込めて伝える
○…区内で活動する知的障害理解啓発グループ「ant mama」の依頼を受け、自身初の監督作品「39窃盗団」(2012年11月公開)を瀬谷公会堂で上映する。「39」とは、「心神喪失者は罰しない」と規定した刑法39条のこと。条例を逆手に、障害を抱える主人公がそそのかされて盗みや空き巣を重ねていく。実弟の清剛(きよたか)氏と大(ひろし)氏を主演に迎え、障害者を取り巻く社会の現実を描き出している。
○…8人兄弟の長男。歯科医だった祖父、両親と共に3歳まで南台に暮らす。「隣の家が商店会のお肉屋で、そこの兄ちゃんに可愛がってもらった」と懐かしむ。高校を中退後、オートバイを乗り回すなど1人で悶々とする日々が続いた。人生に悲観していたが、「弟たちのことは可愛くて面倒を見ていた」。発達障害を抱える清剛氏への愛は変わらず、進路相談会に付き添ったことも。「親が子の進路を決めるのはけしからん。努力や夢を目指す権利は誰にでもある」。相談会で耳にした言葉に自らが刺激を受け、届かないものにチャレンジすることを決意した。
○…その後、スピルバーグ監督が会社を立ち上げた会見をテレビで目にし、映画の道を志す。「USAスピルバーグ様」宛で手紙を出したことも。「バカなことだけど、1つアクションを起こしたことで突き進むことができた」と、大検を取得し日本映画学校に進学。卒業後は助監督やプロデューサーとして経験を積んだ。
○…実弟を起用したことも自主制作だからこそできること。近年は商業映画と小規模映画の格差が著しい。自主作品が作りづらい中、弟を撮るという構想から20年、社会的に重いテーマに笑いを交え、真理を焙り出す。「障害を記号で括らず、固有名詞で付き合えるコミュニティが大事。魂を込め、伝えたいメッセージがある。必要とする人がいるのであれば、今後も続けていきたい」。未来を見据える眼差しが、にこやかな眼鏡の奥に輝く。
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