6月2日から中区の県民共済ギャラリーで水彩画展を開く 中村 博之さん 泉区新橋町在住 69歳
花は生きるエネルギー
○…60歳の誕生日に定年退職し、真っ先に頭に浮かんだのは「絵を描きたい」という欲求だった。たまたま新聞で近所のカルチャーセンターに植物画の講座が開講することを知り、お試しのつもりで受講。以来、植物や花とじっくり向き合うことのできる時間を楽しんでいる。古希を迎えるまでに3回位は開催したいと考えていた水彩画展。今回が目標だった3回目。花から日々、元気をもらっているといい、80歳への坂を上るエネルギーも満点だ。
○…公務員として働く傍ら、定時制高校と夜間大学に通った若き日々。自宅、職場、学校を行き来する毎日は楽ではなかった。それでも、何時になろうとも寝ずに、夕飯の支度をして待ってくれていた母の姿が自分を奮い立たせた。絵に興味を持ち始めたのはその頃。仲間に誘われ絵画展や美術館に足を運び、いつしか独学で油絵を描き始めた。やり始めたら何事にも熱中する性分。キャンバスに向かい始め、気づけば明け方ということもしばしばだった。
○…29歳の頃、大病を患い入院。医師に「会っておきたい人を呼ぶように」と告げられるほど危険な状態だったが、何とか一命をとりとめた。その後結婚。以来、絵に対する気持ちは封印し、リハビリに励んだ。元の体に戻るのに5年かかったが、健康を見つめ直す機会にもなった。元々、小・中は野球少年で、スキーも得意のアウトドア派。子どもが生まれてからは、元気な身体で野球に外遊びにといつも一緒に駆け回った。
○…会場探しから搬入、展示に至るまですべて手づくりの作品展。一点一点には、絵とともにその時の想いを綴った文章が添えられ、歳を重ねてもなお、明るい未来があると信じる作者の強さと優しさが滲む。そんな作品の一番のファンは職場結婚だった奥さん。いつも隣で支えてくれることに「感謝してもしきれない」と見つめるその人こそ、29歳のあの日、自身がもっとも会いたかった人である。
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