神奈川県立金沢文庫(金沢町)は今年3月、14世紀中ごろに書写されたと思われる「華厳経問答(けごんきょうもんどう)」(上巻40ページ、下巻30ページ超)を発見した。称名寺所蔵の仏教典籍約2万点の中から発見したのは、主任学芸員の道津綾乃さん(43)。東洋大学東洋学研究所客員研究員・岡本一平さんと新羅・高麗時代の仏教テキスト研究のための調査中、「華厳経問答」という目録に目がとまったという。
新事実で話題に
華厳経問答の著者は、長らく中国・唐の高僧、法蔵(ほうぞう)(643〜712年)とされてきた。しかし2011年に韓国で開かれた国際シンポジウムで、新羅の義湘(ぎしょう)(625〜702年)の講義を弟子が記録したものと確認されたばかり。この新事実で研究者の間では注目が集まっていたという。道津さんは「目録を見て近年、話題のものではないかと思って調べてみた。本物と分かりとてもビックリした」と発見した喜びを語る。
最古の古写本か
表紙に自らの蔵書であることを示す、称名寺の第3世長老・湛睿(たんえい)(1271〜1346)の名が記されていることから、14世紀中ごろに制作されたと推測される。現在確認できる華厳経問答は、仏教典籍をまとめた「大正新修大蔵経」に活字化され収録されている。この元となった写本は平安末期のものといわれており、所在は不明だ。今回発見された文献は、現存する最古の古写本である可能性が高いという。
「大正新修大蔵経と比べると、文字の異同が確認できる。もしかすると、写本の元となった文献が違うのかも」と目を輝かせる道津さん。また、送り仮名や返り点、ふり仮名が朱と墨で書き込まれていることから、日本人が読み込んだ跡がうかがえるという。「手書きによる古写本の存在はとても珍しい。日本人がどうやって読み解いていったかなど興味は尽きない。小さな発見だが、大きな可能性を秘めている本」と研究の発展を期待する。
金沢文庫はこの華厳経問答を始めとする同時代の仏教研究をさらに進め、ゆくゆくは一般公開も検討していきたい考えだ。
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