外国籍の児童が半数を超える市立飯田北いちょう小学校(宮澤千澄校長)。母国語の読み・書きが苦手な児童も多く、特に人数の多いベトナムに縁のある児童を対象に、3年前から週に一度、母国語保持のためのベトナム語教室を開いている。
同校で外国籍または外国に縁のある児童は、全体の約54%の154人。その中でもっとも多いのがベトナム語を母国語とする児童だ。教育課程の中で母国語を学ぶ時間は設けられないため、毎週木曜日の放課後、4〜6年生の希望者にベトナム語を指導している。今年度の参加者は17人。ベトナム語教室といっても「話す・聞く」が一番の目的ではない。勉強もするが、踊ったり、歌ったり、料理をしたり――、楽しみながらベトナム語に興味を持ってもらうところからでいいという。
授業はすべてベトナム語。長文をスラスラと読める子もいれば、単語の聞き取りでつまづく子もいる。家庭環境によって児童のレベルはさまざま。問題の答え合わせをしていくと、間違えた悔しさからか涙ぐむ児童の姿も。だが「諦めないで。できるよ」と友人から励まされると、また鉛筆を手に取った。授業が始まるまで大騒ぎしていた児童がここまで真剣に、集中して学習するのには、理由がある。
外国に縁があるといっても母国語よりも日本語を中心に生活する児童も増え始めている。だが、母親が母国語しか話せないなど、家庭内でも言葉の壁があり、親子でのコミュニケーションに支障をきたすケースもあると宮澤校長は話す。
「皆は何人として生きていくの」
旧いちょう小時代からベトナム語教室の開設に尽力し、現在もサポートを続ける菊池教諭は、今年度最初の授業で初参加の4年生に質問を投げかけた。「皆は将来何人として生きていくの」。ある女児が悩みながら「日本で生まれたから日本人?分からない」と答えた。「せっかくベトナム人に生まれたのにもったいないと思わない?母国語を生かした仕事で活躍している人もいるよ」
教室の指導員であるベトナム人のファン・ティ・タン・ジムさんもその一人だ。母国ベトナムで日本語を学び、日系企業に勤めていた関係で来日したジムさん。日本で出会ったベトナム人の夫と結婚し、子育てをしながら通訳として活躍している。「外国籍であることを隠したがる人もいるが、ジムさんのように母国語を使って活躍する人、頑張っている人が身近にいると子どもたちの意識も変わる。だからいつも『せっかくベトナム人として生まれたのだから、ベトナム人としての誇りや自信を持って、堂々と活躍してほしい』と伝えているんです」と菊池教諭は話す。
日本で世界で活躍できる人に
飯田北いちょう小学校は2年前、飯田北小といちょう小が統合し、開校。現在8カ国の286人が通っている。「世界にはばたく優秀な人が育つ学校を目指している」と宮澤校長が話す通り、校内には「おはよう」「Xin Chào」「早上好」と各国のあいさつや民芸品、本、民族衣装などが展示され、外国文化を身近に感じられる「多文化共生」の学校づくりが行われている。日本語での授業が困難な児童のために、通訳の配置や日本語教室などの取り組みにも力を入れている。
同化ではなく個性を尊重
外国籍の児童にかかわる取り組みについて疑問を感じている日本人保護者もいるというが、日本で生活するからといって日本人に同化させるのではなく、それぞれの多様な個性を長所として引き出し、活用すべきと菊池教諭は考える。今年度は統合後初めて、多文化共生や国際教育の必要性を訴える広報紙を配布した。「国際教育は英語に限らなくて良いと思う。いつか教育課程の中でイマージョン教育(外国語での日本語の学習指導)が実現できたら」
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