謡曲を学ぶ「西風会」の代表を務める 丸川 隆さん 西が岡在住 71歳
いつか師のような歌声に
○…「先生のように歌いたい」。会員は6人と少数だが、そんな熱意にあふれる面々が揃う。普段は個々で練習し、月2回、能の歌の部分である「謡曲」を観世流の能楽師・青木健一氏に指導を受ける。会員たちにとってプロの歌声を間近で聴ける時間は、まさに宝物。他の人の稽古中も、耳目は釘づけだ。学ぶほどにその奥深さを知ることになり「始めて20年近くになるが、満足のいく出来にはならない」と顔を引き締める。
○…香川県出身で中学、高校と吹奏楽部に所属。ユーフォニアムと指揮を担当し、クラシックを愛した学生時代だった。大学卒業後は、ソフトウェア会社に勤め、米国から飛行機設計のプログラムを輸入する業務を担った。仕事柄、外国人と接する機会が多かったため、少しでも会話が弾むようにと勉強したのが雅楽、歌舞伎などの日本の伝統文化。だが唯一、能だけは機会がなく「西風会の案内を見た時に飛びついた」と満面の笑みを浮かべる。
○…入会間もない頃、久良岐能舞台で開かれた発表会。初心者の自身にも役が割り当てられた。「立派な舞台でお役をもらえたのがうれしくてね」と懐かしそうに振り返る。だが、実は目立つ役よりも重要なのはコーラスのような「地謡(じうたい)」だと明かす。謡曲の土台であり、舞台の良さはその歌声で決まるほどだという。緊張の初舞台は、地謡の能楽師の「お腹からビンビン響く声」に圧倒されて終了。以来「自分もあんな風に」と一層稽古に励んできた。
○…入会して17年。習った曲は150にも及ぶが、繰り返し習い直している曲も少なくない。難度の高い曲に挑戦することも楽しみだが、プロの歌を聴くたび「まだ上に行くのは恐れ多い」と自らを省みる。謡曲には「十徳」といって、習うことでさまざまな良いことがあるという言葉もあるのだと話すが、自身が感じている魅力は10では語りきれない様子。謡曲熱は上がり続ける一方だ。
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