現在、テアトルフォンテで書道展を開催している 森田 敬(たかし)さん 緑園在住 78歳
筆持つ心は若々しく
○…「うまくなるには地道に一生懸命練習するのみ」。日本書道美術館の無鑑査作家として認められた実力を持っているが、書に向き合う時は常に真剣で全力投球だ。テアトルフォンテで開催中の教室の作品展には大小約70作品がズラリ。手先を動かし、脳を使い、姿勢と心を正す書道は生涯の財産になる最高の生きがいだ。いくつになっても日々学び、楽しむことを忘れない。
○…自動車産業がピークのころ、日産のエンジニアとして設計部門で汗を流した。子ども時代に習っていた書道からは多忙のため一時離れたが、30代半ばで趣味として再び筆を手に取った。35年前、緑園に越してきてからは西田東穂氏に師事。本腰を入れて学ぶうちにのめり込み、指導をしたいと考えるようになった。「書だけでなく、西田先生の生き方に共鳴した」。定年間際で仕事を捨ててまで自分のやりたい道に進んだ姿に憧れ、師の人生をなぞるように55歳で退職。森田東敬の名で教室を始めた。
○…区の書道連盟の会長を務めた経験もある。現在は自宅と中和田コミハの2教室に、10代から90代まで50人の生徒が通っている。手本通りに書いた同じ字でも、気持ちを込めて書いたかどうか一目瞭然だ。年齢や性格によってもその印象は変わるといい、手元に残る40年前の作品を手に「今見ても悪くはないね。このころは生き生きとして若さがある」としみじみ。
○…座右の銘は年齢や気持ちによって移り変わってきた。20年前は「発見・感動」。数年前は「人老心不老」、今は「老鶴萬里心(ろうかくばんりのこころ)」だ。「老いても心は若々しく。新しいことに挑戦したい」と歩みを止めない。その一つに「生き方の記録」として、毎日一句詠む俳句がある。さらに油絵の経験を生かして絵を添えた俳画にも熱中。「中国で(教養や才がある)文人と呼ばれる人がいる。条件は書・詩・絵・篆刻(てんこく)ができること。あとは篆刻だけ」と目を細めて笑う。
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