2013年に横浜市指定無形民俗文化財になった「下飯田の廻り地蔵」の地蔵尊が半年間の修復作業を終え、下飯田に戻ってきた。3月29日には修復完了を祝い、元木・本郷・杉の木・十五石の4地区による初の合同念仏会が東泉寺で開催された。
左腕に赤ん坊を抱いたこの地蔵尊は「子育て地蔵」と呼ばれおり、子どもの健康や成長を願って祀られている。厨子(扉付きの仏具)に安置されており、厨子ごと背負って次の家へと順に運び、供養・祈願されてきた。正確な記録はないが、少なくとも江戸時代から200年以上続く伝統文化とされている。「下飯田の廻り地蔵」は女性が主となって供養し、運び、受け継いできた特徴がある。
これまで1日も絶えることなく常に地域の家を巡り、供養されてきたが、劣化によって右手や足先が無くなるなど、破損部分が目立つようになり、本格的な修復が必要と判断。長年続いてきた巡回を止めるのは大きな決断だったというが、「今後もこの文化を大切に伝承していくために皆、修復に賛成してくれた」と飯田廻り地蔵講の大川千鶴子代表は振り返る。修復は市の許可と助成を受け、昨年9月から東京都の職人によって行われた。ただ見た目を美しくするのではなく、元の形に復元する方針で作業が進められたため、歴史が積み重ねられてきた証拠でもある扉のかすれや色の変化は残したままとなっている。
修復完了を祝う合同念仏会には、4地区の世話係ら40人以上が集まった。東泉寺の本堂に地蔵尊を祀り、参加者らは各地区に伝わる数mある大数珠を手に大きな円になり、数珠を手繰って隣へと回しながら念仏を唱えていった。
大川代表によると、現在4地区66軒の家を地蔵尊が廻っているが供養する期間に決まりはなく、3日ほどで廻す家もあれば、1カ月供養し続ける家もある。地蔵尊は木製だが、厨子を含めてその重さは30kgを超えるという。昔から背負って運ぶのが一般的だったが、高齢の女性にはかなりの重さのため、台車などを利用したり、互いに助け合うなどしている。10年ほど前の調査では、地区を端から端まで往復するまでに2年超かかっている。大川代表は「これからも変わらず、ゆるやかにのんびりと伝統が続いていけば」と話す。
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