(株)大川印刷(上矢部町)の社長、大川哲郎さんはこのほど、東日本大震災で倒壊した寺院の柱を使い、知人らとエレキギターを製作した。今後、音楽を通じて震災の記憶を伝える活動を展開していく予定だという。
現在の辻文生住職で29代目となる長い歴史を有する宮城県南三陸町の徳性寺。海岸線から120mに建つ本堂はかつて明治三陸地震の津波で倒壊した際、出羽三山にあった仏堂を移築したもの。その後、1933年、60年と2度にわたり津波の被害を受けながらも無事だったが、今回の震災では高さ25mの波に飲み込まれて全壊した。
500年以上前に切り出され、本堂の四隅を支えてきた4本の柱。瓦礫となって放置されていたところ、大川さんは、被災地支援活動を行っている知人から「撤去するのは忍びない」と木材の活用法について相談を受け、アメリカのブルースシンガーの生家を材料にギターが作られた話を参考に、エレキギターの製作を提案。さっそく「徳性寺ギタープロジェクト」として震災から半年後の2011年9月に活動が始まった。愛知県の楽器会社への運搬など多くのボランティアに支えられながら、ボディーに柱を活用し、ヘッド部分に「徳性寺」の名前が入ったギター4本が今年2月に完成した。
音で記憶伝えやすく
学生時代からバンド活動を趣味にもつ大川さんは、「手入れして柱として残す手もあるが、形を音楽に変えることで被災地の想いを伝えやすくなる。今後、震災の記憶があまりない若い世代に震災を知ってもらう時にも有効では」と、利点について説明する。
また、辻文生住職は「木魚、鐘、銅鑼など、仏教に『音』はつきもの。被災者にとっては心の支援も大事で、本堂の柱で作られたギターで音楽を奏でれば、聴く人も心が安らぐのではないか」と話していた。
完成したギターは1本を徳性寺に寄贈するほか、大川印刷でも所有して横浜と東北を結ぶイベント等で活用する予定。また、震災に特別な想いをもつ著名なギタリストへの寄贈、今回の製作費にあてるためにオークションへの出品も検討しているという。
大川印刷では印刷物の受注1件につき500円を被災地支援金にあてる活動を継続して行っているが、今回は同社の事業と無関係。しかし、大川さんは「印刷会社はあらゆる業界の企業と繋がりがある。今回のプロジェクトは、そんなネットワークを生かして物事を実現できる良い実例になった」とし、「地域企業にできるのは大きなものではないが、息の長い支援を続けていきたい」と話していた。
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