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戸塚区版 公開:2013年5月30日 エリアトップへ

「やるしかない」と被災地へ 歯科医 山口里恵さん

公開:2013年5月30日

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石巻のベースキャンプでも活動
石巻のベースキャンプでも活動

 「一時も早く、ご家族の元へ」――。

 未曽有の大震災に見舞われた被災地で、山口里恵さん(55)が遺体の身元確認をしながら願っていたのは、この一点のみだった。

 警察協力歯科医としても活動する八巻歯科医院(下倉田町)院長の山口さんは、3・11の大震災直後に県歯科医師会の緊急派遣要請に応じる決意をした。警察協力歯科医として遺体の身元確認に携わっていたこともあったが、何より、次女を幼くして亡くした経験があるからこそ「ご遺族の気持ちが分かる。やるしかない」との思いがあった。だが、一旦は出動要請があったものの、女性の派遣は危険であること等を理由に、4月の派遣は中止となった。

 2度目の要請に応じて現地に向かったのは7月15日。歯科医師会会員かつ開業医として、女性では国内で初めての派遣となった。3歳の孫がアニメの台詞にかけて発した「ここで行かなきゃ女が廃る」の言葉にも後押しされた。

 現地での任務は、主に遺体の歯型や治療痕、残存歯等を元にしたチャートの作成。身元不明者が過去に通院した際のカルテがある場合は、当人の可能性が高いものとチャートを照合する。

 7月20日まで、21人の確認で合致はなかった。「ご家族へ」の思いは強いが、勇気を持って「別人」と鑑定することも大切という。

 活動は南三陸町、石巻、気仙沼。2日目終了時、事前説明よりも遺体の数が多いことが気になり、娘の菩提寺の和尚に電話を入れた。「(山口さんは)娘を亡くした痛みを知っているから。(亡くなった人が)三途の河原で遊んでいる娘の頭をなでて、『お母さんに世話になったよ』と言うのだろう」。和尚の言葉に気持ちが吹っ切れた。

 現地警察関係者らとの作業で重要なのは円滑な連携。そのためには、あえて「笑み」も忘れなかった。任務が終了したのは20日午後4時。1体の確認作業ができず、「東京のチームが行う」と聞かされたが、何とも心残りだった。

 それから2年、患者への向き合い方も変わった。「医は仁術」。厳しかった父の教えを胸に、今日も「患者を守る」。

「笑み」が現地での活動を円滑にした(ともに任務にあたった現地警察関係者と)
「笑み」が現地での活動を円滑にした(ともに任務にあたった現地警察関係者と)

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