戸塚区民文化センターで作品展を開いている「石刻の会」の代表を務める 関 進さん 舞岡町在住 77歳
まっすぐ、深く、美しく
○…小さな直方体の石に、彫刻刀で模様を彫りこみ、単色で摺る「石刻」。約13年間、「石刻の会」は戸塚で活動を続け、25日まで開催中の作品展も今回で3回目になるという。仕事を引退した際に発足させた3つの講習会の一つが「石刻の会」だった。PTAに入っていた妻にすすめられて石刻を指導できる講師を探したことがきっかけだ。
○…現在会員は講師を含めた9人。細かい作業と集中することに長けた、個性的なメンバーで構成されている。石刻は本来、紀元前から培われてきた技術で、篆書(てんしょ)(漢字の一種)を石に彫るもの。「奥が深く、多くの勉強が必要な文化だけれど、作品を見た人が分からない文字を彫っても楽しくない。浅く広く近代的なものを彫っています」と話す。日本語にある漢字からベネチアンレースの模様、夏目漱石の肖像まで、メンバーは皆自由な発想で創作に励んでいるそうだ。
○…戸塚に引っ越してきたのは、50年ほど前。丸善株式会社に勤務し、東京に通うことが多かったため、戸塚は帰るための町だったという。その後、区内の地区センターで指導員として働くようになってから「戸塚は文化の中心地になり得る」と考えるようになった。イベントや写真展を企画した経験が、今も活動に生かされている。
○…座右の言葉は「一生稽古」、文化勲章を受章した青山杉雨氏の書からとのこと。面積の少ない石の地に細かく彫り続けていく作業は、精神力を使いひたすら自身との戦いだが、辛いと感じたことはなく、むしろ癒しにすらなっているそうだ。彫る数を重ねるほど、バランスのとれた線が描け、美しい作品に仕上がる。しかしその後のインクのつけ方、押し方次第で模様が大きく変わる、偶然がつくる芸術ともいえる。「(石刻を)戸塚文化の一つとして残していきたい。そのためにも展覧会では一人でも多くの方に興味を持ってほしい」と声に熱を込めた。
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