聞き書き隊 高齢者の語りを本に 知識や経験後世に伝える
桂台地域ケアプラザで活動を始めたボランティア団体「聞き書き隊」が発足から1カ月を迎えた。高齢者の話を聞き、話し言葉のまま本にまとめる活動。作品を見て「自分も語りたい」と申し出る人もおり、徐々に広がりを見せている。
孤立・介護予防にも
テーマは決めず、話したいことを話してもらい、聞き手と語り手が共同で本にしていく「聞き書き」。語り手である高齢者の知識や経験を後世に伝えることに加え、外に出て聞き手と会話することなどが、孤立防止や介護予防につながると期待されている。すでに全国で行われているが、栄区内では初めての取り組みだ。
桂台地域ケアプラザで「聞き書き隊」が発足したのは先月17日。同所で以前から行っていた傾聴ボランティアを発展させたいという思いを関係者が抱く中、1人が聞き書きボランティアについて書かれた新聞記事を持ってきたことがきっかけだった。
地域から参加者を募り、聞き書き作家の小田豊二さんを招いて、9月から「聞き書きボランティア養成講座」をスタート。講座終了後に隊が発足した。現在は14人が所属している。
発足後は各隊員がそれぞれ活動。同所のデイサービス利用者を中心に語り手を募り、数人に対して聞き書きを実施してきた。内容は戦争や戦後の疎開、阪神大震災の経験などさまざまで、すでに製本まで終わったものもある。
菅谷正明さん(65)は90代女性に4回の聞き取りから本を作成した。「本になると、とても喜んでくれた」と笑顔。また、母が語り手になったという吉野三重子さん(63)は「作品を近所の人に見せたら、語りたいという人が出てきた」と話し、活動が少しずつ地域に広がりをみせている。
今後は月に1回定例会を行い、地域の団体の協力で製本のためのパソコン講座や、先行して活動している人の話を共有するなどしていくという。自らも聞き書きを行っている同所の石塚淳所長(47)は「作品を作るだけでなく、語り手と聞き手がやり取りをする過程が大切。区内の他の場所でもできるように呼びかけている」と話した。
完成した本は聞き手、語り手、同ケアプラザがそれぞれ1冊ずつ所有している。
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