「貧困なくそうキャンペーン」シンポジウムで基調講演を行った 加藤 彰彦さん 田谷町在住 73歳
人に寄り添い、地域つなぐ
○…「野本三吉」のペンネームでさまざまな著書を残し、近年では沖縄大学の学長を務めた。今年6月に子どもの頃から過ごした栄区へ戻り、昔からの知り合いとの縁からNPO法人WE21ジャパンさかえなどが主催するシンポジウムで日本の貧困について講演。「貧困には大きく経済(貧乏)、人間関係(一人ぼっち)、意欲がなくなる(絶望)の3つがある。仲間がいれば助け合える。そのためにも地域に誰もが集まれる場所を作れたら」
○…出身は東京都で、3歳の時に東京大空襲を経験。家や妹を失い、父の実家がある田谷町へ移り住んだ。豊田小学校から大正中学校、戸塚高校、横浜国立大学へと進み、卒業後は小学校教諭に。4年ほど勤めてから退職し、全国を放浪した後、中区の寿生活館で生活相談員、児童相談所でケースワーカーとして勤務。社会で苦しむ日雇い労働者や子どもたちなどに寄り添い、向き合ってその生活を記録してきた。
○…児童相談所を離れてからは、横浜市立大学で社会福祉を教えた後、2002年から沖縄大学へ。前年にアメリカで起きた同時多発テロから受けた衝撃が大きく「人間の原点に戻らなければと思った」と振り返る。ここではさまざまな角度から子どもについて考える「こども文化学科」を創設。「子どもが安心して育つ社会と時代をつくること」をテーマに励んできた。
○…これからやりたいことの一つは、田谷町に住む多くの人々に会って話を聞き、地域の新聞を作ること。「老人クラブの人や子どもたちなどを記者にして、皆でいろいろ考えて作る。そんなことができたら面白いと思う」と口元を緩める。また「小学校を軸にして人々に集まってもらい、地域の人々に先生を支えてもらう。学校がそういった場になってもいい」。多くの人をつなぎ、ともに支え合っていく社会を目指して。人々に寄り添い、つないでいく日々は続く。