3月10日付けで金沢警察署 署長に着任した 井本 昇さん 金沢区内在住 55歳
純粋な正義感が出発点
○…「強く、正しく、温かく」―金沢警察署の署長に着任した3月10日、署員を前に訓示を述べた。翌11日、未曾有の被害をもたらした東日本大震災が起こった。区内の地名も分からない着任直後の大災害。そんな中、署員一丸となり冒頭の訓示を実行すべく、区民の安全・安心の確保に奔走した。1週間たった取材日でも、署員は計画停電の対応などに追われ、ほぼ不眠不休の状態だとか。「停電に乗じての治安の悪化、2次的被害を防ぐため、すばやく対応していく」と話す言葉に、力強さが宿る。
○…警察官だった父の背中を見て、自然と芽生えた刑事への憧れ。「悪人をつかまえたい」という純粋な正義感が刑事となる出発点だった。だが高校時代には陸上のやり投げの選手として頭角を現し、インターハイに出場。「あのままいっていれば、高校の体育教師になっていたかも」と振り返る。ところが、大学時代に肩を壊し、選手生活の続行を断念してしまう。やはり道は父と同じ刑事へとつながっていた。
○…新人の時、捜査中に郵便局で不審な男を見かけた。職務質問をしたところ、今から郵便局強盗に入ろうとしていたことが発覚。強盗予備罪で現行犯逮捕した。「これで面白くなって、仕事にズボッてはまった」。捜査一課や暴力団対策課など刑事部畑を渡り歩き、修羅場を経験してきた。だが緊迫した場面でも、「怖い」と思ったことはないという。「こっちは、正しいことをやっている」。そんな強い自負が、事件に真正面から取り組む原動力となる。
○…「3人の子どもには申し訳なかったな」とポツリ。職務に没頭するあまり、子どもの入学式も卒業式も1回も行ったことがないという。自身の反省を胸に、今は署員をあずかる「父親的存在」として、若い人にも休みをとれるよう心を配る。「刑事は誇りを持てる職業。金沢をさらに安心できる街にしていきたい」と抱負を話した。
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