奇数出葉なのに「八つ手」とは 円熟するほど頭を下げる「ヤツデ」 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
冬を迎えると、花をつける草木が少なくなりますが、この時期を彩る樹木の一つに「ヤツデ」があります。公園や庭によく植えられ、香りのある白い花をたくさんつけて虫をおびき寄せています。
ヤツデの花には、雄蕊のみの単性花と雄蕊・雌蕊が揃っている両性花が雑居しており、一つの花序(球形状をした一つ)が咲き終わると次の花序へと移っていくので、全部の花序が咲き終わるまで、1〜2カ月もかかります。これは冬になると花粉を運ぶ虫たちが少なくなるため、花期を長くして受粉の機会を多くしているのです。ウメやビワ等のように冬に開花する木の特徴の一つです。
葉は天狗の団扇のように大きく、出葉数7枚または9枚といった奇数がほとんどです。しかし昔から数が多い時に「8」がよく使われていたのでこの名があります。果実は黒く熟してくると、重みで先端から垂れ下がり、完全に倒れた状態になると花軸の基から新しい葉が出てきます。円熟するほど頭を低く下げてくる姿は、人が年を経るほど腰が低くなるのと同じかもしれません。
少年時代、この実を竹鉄砲の弾に使って遊んだ経験があります。筒と弾との隙間が少ないほど圧力がかかり、「ポンッ」と大きな音を立てて遠くへ飛び出していきます。弾には他に、スギの雄花の塊りとかヤブランやリュウノヒゲの実も利用したことがありました。
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