3月開幕の金沢区民軟式野球大会を運営する区野球連盟の理事長を務める 中武 正博さん 六浦南在住 66歳
「生涯審判員」を貫く
〇…金沢区野球連盟に入って約40年。少年野球から高校野球、草野球まで数えきれないほどの試合をジャッジしてきた。「死ぬまでやりたい。”生涯審判員”ってね」。仕事や家庭との両立に悩む若者を見れば、「サラリーマンには定年があるが、審判員は歳をとってもグラウンドに行けば仕事ができる」とその良さを説明し、「だから絶対にやめるな」と語りかける。次世代に熱い思いを伝えながら連盟を牽引し続ける。
〇…高校野球の強豪、横浜と創学館がある金沢区は、他区の野球連盟からうらやましがられる存在だ。「恵まれている環境だからこそ、うまくなれとよく言っています」。横高出身の松坂大輔投手の球が当たりへこんだマスクは、今でも大切にしまってある。「目をかけている選手が伸びると嬉しい。審判はそういう楽しみがあるんだよな」。だが高校野球の審判は60歳が定年。「正直、寂しいね。若い人をみるとヘボだなって思っちゃう」と苦笑する。
〇…たった一度だけ、辞めようと思った時期がある。長女が生まれ、休日すら一緒に過ごせない「後ろめたさ」を感じたからだ。「まるで母子家庭。でも女房は文句も言わず送り出してくれた」。迷った末、審判員を続けることを選び、入学式や卒業式、運動会は1度も行ったことはない。だからこそ娘の結婚式で「パパありがとう」の一言を聞いた時は、涙があふれた。「きっと恨んでいるだろうと思っていたから、ほっとしてね」と目をうるませる。
〇…「なんか弟や息子、孫がいっぱいいる感じかな」―連盟の仲間を語ると目尻が下がる。自身の経験もあって、そんな仲間の家族も大切にしたいと、それぞれの誕生日に連盟から花を贈ることを発案。それは20年間続く伝統になった。「家族のおかげで続けられる。けっこう効くんだよ」とにやり。さらなる夢は、横浜市で最初の女子野球部を作ること。チームができれば、”家族”がまた増えそうだ。
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