記者が訪ねる かなざわの名刹 第21回 福船山 安立寺
毎年8月16日に行われる「灯篭(とうろう)流し」。寺を出た行列は、町屋の街を通りぬけ、野島運河の河口へ。いくつもの灯篭が、金沢の海へ放たれる。海難者や魚の供養を行うこの行事は、100年以上続いているもの。かつての野島浦にこれを流すのは、鎌倉時代、宗祖・日蓮がここに着岸したことに由来するようだ。
1253(建長5)年夏、下総の豪族・富木(とき)常忍の船で鎌倉を目指した日蓮。船中で常忍に法話をしながら、この野島浦に着岸した。そこで出会ったのが、真言修験の高僧だったこの寺の住職・悟明法印。日蓮に教えを説かれると深く帰依し、弟子となった。
改宗には檀徒の理解がなかなか得られなかったが、あるとき、常忍が彫ったという日蓮像が授与された。日蓮自ら開眼し、「必ず感応(信心が神仏に通じること)あるべし」と語ったこの像を拝むと、改宗の願いが見事に叶ったという。現在でもこの像は「感応の祖師」と呼ばれ、信仰の中心となっている。
【本尊】十界大曼荼羅
【宗派】日蓮宗
【住所・電話】金沢区町屋町7の4 【電話】045・701・7597
(資料・金沢区仏教青年会
「かなざわ霊場めぐり」1994年)
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