古文書から見る金沢 第3回 文/飯塚玲子
大道ふれあいむかし資料館に、古文書ではないが、珍しい俳句の本がある。『元除編覧』という本で、関根白芹という日本橋馬喰町の裕福な百姓宿枡屋の主人で葛飾派其日庵五世だった俳人と、その門人や交流のあった人達が大晦日やお正月を詠んだ句が載っている。題名の元とは元旦、除とは除夜の事である。
葛飾派其日庵とは「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の句がある山口素堂を祖とし、素堂は葛飾に住み其日庵の号がある。この本が珍しいのは、金沢で活躍した指月という俳人の書入れがあるからである。
江戸時代、金沢では俳句が盛んだったが、俳句を号で詠んでいるため、本名がわからずどんな人たちかは、あまりよくわかっていない。しかし、相川家文書の中にこの指月の書入りが残されていたという事は、指月が相川家と縁のあった人と考えられる。指月は大道小の近くに住み、俳句を詠んでいたのかもしれない。
ある本には「麦の穂を たよりにつかむ 別れかな 梅室所持」=写真=という指月の書入れがある。この句は1694(元禄7)年、旅に出る松尾芭蕉が、八丁畷(はっちょうなわて)(川崎)まで見送りに来た弟子たちとの別れに詠んだ。また1830(文政13)年、桜井梅室の筆で、この句碑が八丁畷に建てられ、今も同じ場所にある。
実は句碑が建てられて一か月後、指月らが梅室を招き、瀬戸神社で奉納句合を開いている。その時、梅室がこの句の書を持っていて、それを指月が見て書き写したので、「梅室所持」と書いたのではないだろうか。この『元除編覧』には、白芹と交流のあった一茶の句も載っている。
■大道ふれあいむかし資料館(大道小学校内)▽一般開放日時=8月10日(日)・23日(土)の午前10時から正午
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