「帆船日本丸友の会」代表幹事の 鳥海 憲彦さん 富岡西在住 63歳
船の「ぬくもり」繋ぐ
○…進水85周年を1月27日に迎えた「帆船日本丸」。横浜誘致から30年間、船体の清掃などを行うボランティア団体「帆船日本丸友の会」の活動に尽力してきた。月に2回、真鍮部品などを磨きながら感じるのは「人間味」だ。「機械ではなく、人力と風で動く船。木製の部品が多く、人間の手で作られている。ぬくもりが感触として伝わる」という。
○…約83万人の署名で誘致活動が実ったが、時が経ち、今は関心を持つ人が減っているのではないかという懸念がある。船の保存には多くの税金がかかる。万が一、市が予算を打ち切れば、劣化は防げない。「関心を持つ市民がいなくなるとそうなる。僕たちが日頃から関わり続けることで、保存への願いに、説得力が出るはず」。日本丸は、かつて操船学校の練習船だった。外国との輸出入で発展してきた日本にとって、「船乗りを育てた船」の存在意義は大きいという。「日本丸を残していくことは重要」と熱く語り、ふと笑みをこぼす。「これは理屈。一番大きな理由は、『船が好き』ということ」。大きな愛の原点は、幼少の頃にある。
○…父は戦前、日本郵船に勤める船乗りで、戦後も船会社に勤めた。父に連れられて見に行った船の数々は、幼心にときめきをもたらせ、いつの間にか船に携わる仕事が自身の夢となった。横浜国立大で造船を学び、卒業後も造船業に就いた。護衛艦や巡視船、漁業調査船、そして日本丸の後継「日本丸二世」の製造などに携わった。船の魅力は「船の上に『生活』が成り立つ」こと。移動手段でありながら生活ができてしまうことが面白いという。
○…造船の仕事もあと2年で定年。その後は船で日本一周を巡る旅に出たいという。「行きたいのはヨーロッパ。海洋国家が多いから港を見たい」と目を輝かせる。夢は進水100周年の際に「船上で仲間とビールで乾杯する」こと。「ここまで来たから、最後まで『船一筋』でいきたいですね」
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