物語でめぐる金沢 『午後の曳航』(三島由紀夫著 新潮社)文・協力/金沢図書館
三島由紀夫が昭和38年(1963年)に著した長編小説「午後の曳航」は横浜が舞台の小説です。
主人公の少年が暮らす家は中区の山手にあり、その母が取りしきる洋品店は元町にあります。彼らの前に船乗りの竜二が現れ、少年は彼に憧れも失望も抱いていくというストーリーです。
物語のクライマックスで、金沢区の情景が描かれます。
「道は青砥の山ぞいに金沢区へ入って行った。午後の冬空を煩瑣(はんさ)な碍子(がいし)と電線の模様で区切る発電所の前をとおって、富岡隧道(トンネル)をくぐり抜けると、右方には山ぞいに京浜急行の線路が走り、左方には丘いっぱいに新らしい明るい分譲地が展(ひら)けていた。」 (184頁)
小説が書かれて半世紀を過ぎた現在でも、青砥から鳥見塚に向かって歩けば、ほぼ小説の描写どおり、変電所、トンネル、右に線路、左に住宅街を見ることができるでしょう。
そうして最後に登場人物たちが行き着いたのは、富岡総合公園のあたりでしょうか。たどりついた先で、彼らは広大な海の眺めに目をみはっています。
この見晴らしの良い場所で、物語は苦い結末を迎えます。
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