季節の花【9】 名月と「ススキ」 乾燥・強光・高温の「3K」に強い 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
陰暦8月15日は中秋の名月で、古くからお月見にススキと団子を供える風習があります。「芋名月」ともいい、本来は団子ではなく、サトイモを供えた農作物の収穫儀式の一つでした。ちょうどこの時期に収穫期にあたるサトイモを丸く剥いて供えていたのが、いつのまにか団子に代わっていきました。一緒に添えるススキは「月の神」を招く道しるべで、ススキの穂を稲の穂に見立てて、「豊饒を祝う」という意味も含んでいます。また、ススキには呪術的な力があり、昔から収穫物を悪霊や魔物、災いから守ってくれると信じられていました。
成長が早く「すくすく育つ木」ということから「ススキ」と名付けられました。また穂が獣の尾に似ているため「オバナ」(尾花)として、和歌や詩等で親しまれています。
生活力は抜群に強く、乾燥・強光・高温の「3K」に強い植物です。しかも土から吸収したケイ酸を体内に蓄積しているため、体は硬く、茎はコンクリートと同じくらいの耐久力を持っています。葉はガラス質の棘が鋸の歯のように並んでいるので、下手に触ると剃刀の刃で切ったような傷ができます。これらはいずれも、植物が草食動物から身を守るための防御組織です。
清少納言の枕草子の中に、「秋野で風になびいている様子が良く、しかも秋の花々が終わってしまうと、白髪頭の毛の乱れ立った老人が一人昔を語るばかりになる、人生模様のようである」とあり、草花でススキが一番だと書いています。
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