物語でめぐる金沢 「帰来草―かねさわかまくら時超え奇譚」(松崎雅美、正光堂)文・協力/金沢図書館
歴史のある街を気に入り、2003年に金沢区民となった著者のヒストリーノベル。15年、首都圏を襲った直下地震の後、金沢文庫隧道の崩れた壁から北条実時の古文書が発見された。正嘉二年(1258年)の年号が書かれたその文書の中には「篠原摩利伽(しのはらまりか)」という名が書かれていた。
遡って直下地震の当日、現代の高校生「篠原摩利伽」は称名寺の近くで激しい揺れに遭遇した。気を失った摩利伽が目を覚ますと、そこにあるはずのマンションや道路はなく、ただ砂浜と森が広がっていた。正嘉元年(1257年)の金沢郷にタイムスリップしてしまったのだ。
農民から食べ物を盗むところを目撃された摩利伽は、赤く染めた髪色から天狗ではないかと恐れられる。そんな窮地を救ってくれたのは鎌倉幕府の要人、北条実時だった。周囲の目を欺くため、地上に降臨した女神・摩利支天に仕立て上げられた摩利伽は、鶴岡八幡で人心を慰撫する神事を行う羽目になる。
果して摩利伽は現代の金沢に帰る事が出来るのだろうか。
金沢から鎌倉へ向かう摩利伽たち。当時から存在する瀬戸神社や琵琶島弁天を眺め、朝比奈切通しから鎌倉へ辿る道行では、758年の時の移ろいが感じられる。あらためて鎌倉時代を思いやりつつ同じ道を歩いてみるのも一興かもしれない。
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