季節の花【20】 大輪性の「オオムラサキ」 花の蜜の在処を示す「蜜標」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
時期を逸しましたが、「オオムラサキ」の花についてのお話です。大輪性の園芸品種の総称ともいわれるヒラドツツジの一品種で、原産地は定かでありません。一説にはケラマツツジとリュウキュウツツジとの雑種といわれており、平戸やその周辺の九州のどこかでつくられ、関西や関東方面に移ったと考えられます。樹勢が盛んで、酸性土壌を好むため日本の土に適しており、栽培も容易です。
葉の寿命は半年くらいで入れ替わります。春に出てくる葉(春葉)は、葉質が薄く長大で先端が尖り、秋に落葉します。そして夏に出てくる葉(夏葉)は、分厚くて小さく先端が丸みを帯び、翌春に春葉が伸びた後に落葉します。花は夏葉の先端につき、そこから春葉が強く伸びてきます。
花弁は5裂で、上部1枚の花弁だけに斑点模様があり、これは昆虫に蜜のありかを知らせる密標(ガイドマーク)と呼ばれるものです。この密標は人の目に感じられない波長の光(一種の紫外線)を出し、これを感じ取ることができるマルハナバチ等が認識し、蜜を吸うことができます。この花弁の根元には、口吻を差し込む溝がつくられ、その奥に蜜がたまっています。こうした密標を持つ花は他の花でも見ることができます。
次回は「トチノキ」の予定です。
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