区内の名木古木【8】 手子神社の「トチノキ」 マルハナバチを贔屓する花 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
金沢区の名木古木に指定されているトチノキ(栃の木)は、手子神社(釜利谷南)にある樹齢約290年の樹木1件です。
漢字で「栃」ですが、古くは「橡」が使われていました。また葉が5〜9枚の掌状複葉のため別名「七葉樹」、中国名も「日本七葉樹」で表現されています。
花は雄花と両性花(雌蕊雄蕊両方ある花)が混生した円錐形の大きな花序で、一斉に開花し遠くからでもよく目立ちます。近づくと甘い香りが漂い、様々な昆虫が訪れますが、その中でもトチノキは、マルハナバチの仲間を確実に招き、しっかり花粉を運ばせる工夫をしています。トチノキの雄花は花序全体に咲きますが、両性花は花序の下半部に多く咲き、花弁の斑点は、始め黄色で後に赤く変わります。蜜は黄色の斑点がある若い花の時のみ出ます。マルハナバチは色の識別ができるので、蜜が出ているときだけ訪れます。トチノキは確実に花粉を運んでくれるマルハナバチを、ご贔屓しているわけです。しかも訪れるときには、花序の下半部にドーンと大きく揺らし着地するため、他の昆虫を遠ざけてしまいます。そしてゆっくり蜜を吸いながら上部へ登っていき、花粉をつけて天辺から飛び立ち、次の花へ移動します。
次回は「ヘビイチゴ」の予定です。
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