季節の花㉔ 虫誘う地獄花「カラスビシャク」 「へそくり」の語源に 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
「カラスビシャク」は称名寺や不動池等で見られ、高さ20〜40cmの全身緑色の目立たない草ですが、ウラシマソウと同じ仲間です。名の由来は、花の形が小さな柄杓(ひしゃく)に似ているためで、別名「へそくり」。球根がクリに似ており、花茎の折れ曲がった窪みが臍(へそ)のように見えるからで、あのへそくりの語源になった草です。この球根は漢方薬「半夏」の原料で、吐き気止めや鎮痛剤に効果があり、昔農家の主婦は畑の草むしりをしながらこのカラスビシャク(へそくり)を薬局に持って行き、小銭を稼いで貯めていたことが始まりです。
花は腐敗臭を放ち、ハエが集まり花の中へ入っていきますが、一度入ると後戻りができない仕組みになっていて、ハエは奥へ進み出口がないまま囚われの身となります。奥には雄花と雌花があり、はじめは雌花が咲き、その後、雄花が咲き出すと、一筋の光明が差し込む微かな隙間(出口)ができます。ハエは花粉を一杯つけてやっと脱出に成功します。ハエはこれに懲りず、別の花へ再び入り閉じ込められ、暴れながら雌花に花粉をつけます。カラスビシャクは一時的に幽閉するだけで良心的ですが、同じ仲間のマムシグサは雌雄異株で、雄株には隙間がり、雌株には出口がないため、花粉を貢がせた後は閉じ込めたまま死に至らせる地獄花です。
次回は「プラタナス」の予定です。
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