寄稿 特別展「愛された金沢八景」に寄せて 【2】鏑木清方が愛した君ヶ崎 文/神奈川県立金沢文庫 山地純
金沢区を横断する国道16号線の君が崎の交差点をご存じですか。金沢文庫駅から徒歩5分位のところです。ここに小さな稲荷神社がありますが、実はこの神社は高台から降りてきたのです。もともとは、鎌倉時代には瀬戸内海、江戸時代には内川入江と呼ばれた内海に着き出した「君ヶ崎」という名の岬の鎮守様でした。その場所は現在、マンションが建っています。内海だったところは金沢区役所などがある泥亀の街になっています。そしてこの君ヶ崎の高台に大正から昭和の初めにかけて別荘を持ったのが、美人画で有名な鏑木清方です。
游心亭と名付けられた別荘で描かれた一枚が「武蔵金沢君ヶ崎」です。画中に「むさし金沢君ヶ崎」箱には「武蔵金沢君ヶ崎」「余、金沢の風光を愛し、大正昭和に亘り別業を此地に営む、図は庭中之小景なり 清方画」と鏑木清方自筆で記されており、清方が金沢の風光を愛でていたこと、游心亭から庭を描いたことがわかります。
庭先には稲荷神社の鳥居が見えます。楠山永雄コレクションにある鏑木清方自筆の絵画はこの1点ですが、清方は「金沢三題」という絵も描いていますし、「游心亭日記」も記しています。
日本画家に愛された今はなき金沢の美しい風光の一つがこの「武蔵金沢君ヶ崎」です。
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