著・寺田透 河出書房新書 物語でめぐるわが街 『わが横濱』文・協力/磯子図書館
寺田透(大正4年〜平成7年)は昭和・平成期の文芸評論家で、著書に「道元の言語宇宙」「私本ヴァレリー」等、訳書にバルザック「谷間の百合」があります。
小学3年生で関東大震災にあうまで西区に住んでおり震災後、一家で根岸に。以後、磯子区内で転居し、晩年まで磯子に居住していました。この「わが横濱」は彼の横浜に関する記述などをまとめたもので、自身の鉛筆デッサンによる思い出の光景8点も掲載されています。
家族で命からがら逃げた関東大震災のこと、小学校のとき西区の家から市電の海水浴用の回数券を使い、毎日のように磯子の海岸に来て泳いでいたこと、横浜の、磯子の昔の姿がわかります。
「横浜市電」という文章では、市電の最後の日が描かれています。東京に出掛けた帰り、最後の電車に乗ろう、見ようという人でにぎわう桜木町駅前から、最後から2〜3本前の電車に乗ったところ、その電車には仕事帰りの人などが10人ほどいつもどおりの様子で乗っていて、親愛を覚えた、最後だからゆっくり本でも読みながら帰りたいという願いがかなったと語っています。
彼は根岸湾の埋め立て、市電の廃止など横浜が、変貌しつつあることを嘆いています。区制90周年を迎えた磯子をもし彼が見たら、いったいどんな感想を持つでしょうか?
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