御年102歳。俳人の金原まさ子さん(長浜在住)は一日一句を作り、自身のブログで発表している。更新はほぼ毎日。100歳から始めたブログには毎日100人前後のアクセスがある。
「エスカルゴ三匹食べて三匹嘔(は)く」「女王蟻死す立棺を用意せよ」「菜の花月夜ですよネコが死ぬ夜ですよ」…ブログにはいわゆる「アブノーマル」だと自己分析する句が並ぶ。
近所の俳句会に誘われたのがきっかけで、49歳から俳句を書き始めた。かつては古い俳人の句集を読み漁って歴史的仮名遣いを学び「綺麗な俳句」を作っていたという。しかし、ある時期から「あなたの作品、意味わかんない」と言われる作風に変わっていった。それは夫との死別、そして一つの映画作品との出会いがきっかけだった。
「戦メリ」との出会い
「清く正しくを第一に、真面目に生きてきました」という。生来曲がったことが嫌いで、18歳の頃に読んだ谷崎潤一郎『痴人の愛』の主人公の態度に憤慨したことは、忘れられない記憶。「女に翻弄され簡単についていく主人公を、心から軽蔑した」という。
結婚して以降も「立派な妻」を務めあげてきた。貧しかった戦争の時代も「正しい母」であり続けた。約70年間続けてきた品行方正な性分は、73歳で夫と死別したのをきっかけに、まるで鎖を外されたかのようにガラリと変わる。「気兼ねなく、興味の赴くまま小説や映画を貪る生活をしていました。そんなとき『戦場のメリークリスマス』に出会ったんです」。
坂本龍一演じる”ヨノイ”の頬に、デヴィッド・ボウイ演じる”セリアズ”が接吻する姿を見て興奮。「この世にこんな美しい世界があったのか」と幸福気分を味わったという。「『戦メリ』を皮切りに、ホモセクシャルをはじめとした”アブノーマル”な世界に没入していきました」と話す。
いったん鎖が外れ身軽になった体は、それ以降、アブノーマルな世界をさまよい続けた。本棚には三島由紀夫、寺山修二、澁澤龍彦らの作品や『世界の奇書』や『男色大鑑』、さらに「BL(ボーイズラブ)小説」などが並ぶ。BLをこよなく愛する女性をネットスラングで「腐女子」というが、金原さんはまさに「世界最高齢腐女子」。「こういう熱意が、長生きの秘訣かもしれません」とほほ笑む。
目標は美容整形
アブノーマルな世界を熱く語りつつも、一方で「ミーハー」な面も見せる。「このまえ来たケネディ駐日アメリカ大使の息子、イケメンで見とれちゃった。最近のお気に入りは栗原類。AKB48も可愛くて見ているのが大好き」。その口ぶりはまるで女子高校生の日常会話のよう。「世の中のことがみんな不思議で面白いの。だからこそ長生きしなきゃいけないです」という。
「目標は東京五輪を見に行くこと。その前に宝くじを当てて、美容整形。どれくらい若くなるか試さなきゃ」。興味の尽きぬその目はキラキラと輝いて見える。
|
<PR>
金沢区・磯子区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>