未だ果てぬ少年の夢 芹が谷の佐藤さん ミニSLと半世紀
「日本人は海外に比べると、無理やり大人と子どもの境界線を引いているように感じる。僕は大人になっても好きなものは好きという考え方なので」―。
芹が谷在住の佐藤義正さんが鉄道模型に興味を抱き始めたのは中学生の頃。通いつめていた本牧の模型店から手伝いを頼まれるようになり、稼いだ小遣いで念願の模型を買い集めた。汽車を間近で見る機会がなかったからこそ一層夢中になり、いつしか「どうせなら自分で作って蒸気で走らせたい」と考えるように。
そして20歳の頃、いよいよミニSLの制作に取り掛かる。本場イギリスでは”ライブスチーム”と呼ばれ、構造は本物の蒸気機関車と同じ。その制作は方眼紙に描く精密な設計図作りに始まり、ボディ部分の銅版はもちろん細かな部品に至るまですべて手作り。専門的な勉強はしていないが、「必要に迫られたら人間は何でもできる」と、イギリスから取り寄せた英文の専門誌を読み漁り、これまでに独学で計4両を完成させた。
警察官だった現役時代はお酒より制作作業が一番の息抜き。帰宅後は自宅敷地内の作業場に向かい、休日は徹夜することも。今は体力が落ち、「人は均等に老いるんだな」と実感する日々だが、それでも「技術は上がっているから短時間でやる」と気持ちは前向きだ。
少年時代から半世紀も情熱を注ぎ続けるミニSL。「自分で描いた難しい設計図を実現させるために挑む作業は、まさに人生そのもの」。目標に到達したら再び新たなチャレンジが始まると、”68歳の少年”は5台目の制作に夢中だ。
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