育児と介護という2つの「ケア」が同時に求められる「ダブルケア」の状態に悩む人をサポートするため、港南区内の市民グループと横浜国立大学大学院の相馬直子准教授らが中心となり、居場所づくりやサポーター制度の創設に向けたプロジェクトを進めている。
子育てと親の介護、孫育てと配偶者の介護などがダブルケアの主な例。社会全体の高齢化や晩婚化などが背景にあり、相馬准教授は「大家族中心の時代には、当たり前のことでもあった。だが、地域のつながりが希薄化し、個人化・孤立化してきたことで問題となっている」と話す。
相馬准教授らが2012年から14年の間に子育て中の女性約1900人を対象に行った調査では、ダブルケアをこれまでに経験、または数年先に直面すると考えられる人が約4割だったという。「団塊の世代が75歳以上になる『2025年』、さらに団塊ジュニアが65歳以上になる『2040年』には一層深刻になるが、これはそう遠くない」と警鐘を鳴らす。また「行政では子育てと介護はそれぞれ別のこととして扱われており、ダブルケア人口は把握されていない」と指摘する。
「孤立させない」
芹が谷でコミュニティカフェなどを運営してきた「てとてと」の代表・植木美子(よしこ)さん(42)も、子育てと義父母の介護というダブルケアに悩んだ1人。植木さんは、「自分も大変な時期だったけど、ダブルケアでつぶれてしまいそうな友人が周りにもいた。孤立させないよう、どうにか助けることができないかとずっと考えていた」と明かす。
植木さんが中心となり4月16日に日限山の「さわやか港南」で行われた意見交換会「プロジェクトはじまりの会」には、地域活動に取り組むメンバーや相馬准教授の他、地域ケアプラザ職員、横浜市政策局の担当者なども出席。また今回は、ダブルケアの当事者・経験者も参加し、その中で泉区在住の水原綾乃さん(28)は自身の妊娠中に若年性認知症の母の介護をしていたという。水原さんは「自分も誰かを頼りたい状況で介護を担うのは、思った以上に辛かった。そんな時に一番頼りになったのは、昔から知っている近所のおばさんたちだった」と話した。
資金調達にネット活用
プロジェクトリーダーを務める植木さんは、地域にダブルケアのサポーター制度を立ち上げることや、「ダブルケアに悩む人がいつでも立ち寄って息抜きできるような居場所づくりができれば」と基本方針を示す。5月からは相馬准教授らを中心にダブルケアの実態調査を開始するとともに、仲間集めやサポーター育成などに取り組んでいくという。
活動資金は、インターネットなどを活用して広く一般に資金提供を呼びかける「クラウドファンディング」を利用。同形態での資金調達の支援に実績のあるローカルグッドヨコハマの協力を受けながら、周知に取り組んでいく予定だ(【URL】http://bit.ly/doublecare)。
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