見事な千鳥破風の外観に、お寺の本堂のような高天井の脱衣所に並ぶ常連の入浴グッズの数々―。西区久保町で70年間にわたり地域に愛されてきた銭湯「太平館」が8月22日の営業をもって終了した。
終戦翌年の1946年に現在の店主、中野金光さん(76)の父が創業。西区では戦前から造船所などで働く労働者が仕事帰りに銭湯を利用し、29年当時には区内の銭湯は69軒と市内で一番多かった。18歳で店に入り、25歳の若さで継いだ中野さん。当時はまだ湯を薪で沸かしていて「火加減が難しくて釜の前を離れられないし、暑くて大変だったよ」と笑う。市電が走り、買い物客や工場帰りの人々で商店街が賑わっていた頃には「千人風呂と呼ばれるくらい多くの人がお風呂を楽しんでくれたよ」。
ボイラーに変わってもこだわりは少し熱めの湯。「いつもきれいな湯を保つためにもお客さんには『好きに水でうめてよ』ってね」。入口の鯉の滝登りを描いたタイル絵はいつまでも店の看板だった。常連からは廃業を惜しむ声が多く聞かれたが、中野さんは「閉めるのは残念だけど時代の流れだね。今まで通ってくれたお客さんに感謝です」と少し寂しげな笑顔で語っていた。
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