みなとみらい21地区に保存・公開されている「帆船日本丸」(以下、日本丸)がこのほど、国の重要文化財に指定される見通しとなった。3月10日に開かれた文化審議会文化財分科会の答申を受けてのもの。船舶資格を有し、浮かべた状態で保存されている船舶としては初の文化財指定となる。日本丸を管理する(公財)帆船日本丸記念財団の金近忠彦代表理事は「恒久的に保存されることになる」と喜びを口にしていた。
日本丸の重要文化財指定は、水上に保存されている船としては昨年指定された山下公園の氷川丸に続き2隻目。指定は、文化庁の手続きを経て今夏の見込み。
日本丸は、1930(昭和5)年に建造された日本を代表する船員養成の練習帆船。製造所は(株)川崎造船所(現川崎重工業(株)船舶海洋カンパニー神戸工場)で鋼製。全長約97m、幅約13mの大型船で総トン数は約2278トン。
今回の答申は、長期間にわたり船員を養成し日本の海運業の発展に貢献、また稀少な戦前期建造の船で海運史、造船技術史など研究上の貴重な点が、文化財として評価された。近代産業の遺産で稼働中の船舶などが国重文に指定されることは珍しいという。
日本丸は、戦前は主に太平洋で訓練の遠洋航海を重ねた。太平洋戦争中の43年には帆の部分(帆走艤装)を撤去、船体も白からねずみ色に変わり、瀬戸内海で石炭輸送に従事。終戦後は引揚者の帰還輸送、50年の朝鮮戦争勃発後は兵員などの特殊輸送、また南方八島の遺骨収集航海も行った。帆の部分が復旧し、53年から帆走による遠洋航海を再開。84年に国から横浜市に譲渡され引退し、翌年から一般公開されている。現役の54年間に1万1500人の船員実習生を育てた。
恒久的保存に期待
3年前から重文指定の働き掛けを行ってきた帆船日本丸記念財団の金近代表理事は、今回の答申を受け「悲願でした。これで恒久的に保存ができる見通しがつくことになる」と語っていた。また、日本丸係留後、一度も水を抜いていないという1号ドック(2000年、国重文指定)とともに修繕し、市民に公開したいと期待をする。
答申を記念し3月20日には日本丸・横浜みなと博物館が入館無料に、4月16日には今年初の全ての帆を広げる「総帆展帆」が行われる。
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