「横浜みなと映画祭」のプロデューサーを務める映画監督 中村高寛(たかゆき)さん 南区在住 37歳
伊勢佐木に新たな映画文化を
◯…「映画の街の復権」を掲げ、伊勢佐木町を舞台に小さな映画祭が開催される。レッドカーペットも華やかなセレブも登場しない。主役は海外の映画祭などで高い評価を得ながら、上映機会がほとんどない若手監督の作品だ。「どれも作り手の『想い』が溢れたものばかり。先入観なく楽しんでほしい」。プロデューサーとして、地域との調整や監督との折衝に奔走する。
◯…08年、09年とシネマ・ジャック&ベティで開催された「黄金町映画祭」に運営スタッフとして関わった。「世界に通じる映画祭に」と志は高かったが予算は少ない。そこで思いついたのが、海外で評価を得た日本作品の「逆輸入」というアイデア。良作を紹介し映画関係者やファンから高い評価を得た一方で、物足りなさも感じていた。「映画祭の成功に欠かせない、まちとの関わりや広がりが少なかった」。そこで今回は、従来のコンセプトを活かしながら、イベントスペースでのトークショーやライブなど、様々な仕掛けでまちとの距離を縮める。
◯…自身の映画人生と伊勢佐木町が奇妙なほど重なりあう。横浜の路上に立ち続けた伝説的娼婦のドキュメンタリー『ヨコハマメリー』で06年にデビュー。伊勢佐木町の映画館で公開されるや大きな反響を呼び、市内だけで3万人を動員した。「メリーさん」と出会ったのも学生時代、伊勢佐木町の映画館に入り浸っていた頃だ。「映画に出会い、映画人として育ててもらった特別な場所。だからこそ恩返しがしたい。何より僕の作品を上映してくれる映画館を残さないと」と笑う。
◯…次回作の準備中だが、映画監督しては「食えない」状態が続く。生活のためテレビの仕事も受けるが「やりたいのは映画」という軸はぶれない。「その年齢、その時代にしか撮れないものを残したい」。対象に真摯に向き合い、自らの感動と共鳴をフィルムに焼き付ける。その姿勢はこれからも変わらないはずだ。
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