最新号:2012年2月16日号
2009年11月26日号
○…陶芸部門の公募展としては日本で最も権威があると言われる「全陶展」。13回目の挑戦で栄冠を手にした。「びっくりしたが、自分がやってきたことが認められた」と万感の思い。高さ50cmの鉢の中に水の動きを表現した作品「波状」は「普段は作品に厳しい」という妻が焼き上がりの段階で珍しく褒めてくれたという。「見ている人が穏やかになるような作品を作りたい」。その一心で打ち込んだ結果が大賞だった。
○…楽焼作家の次男として東京・田端に生まれる。実家の粘土店で働き、作家になることは意識していなかった。しかし、16年前、兄が講師の陶芸教室を手伝うようになり、本格的な作陶活動に入る。「きっちりしたものが好き」という性格がベースとなる作品は、師と仰ぐ作家から「あなたが見えない」と言われたこともある。「自分がどう表現したいか」。単純ながらも奥深い問題の答えが水や海をイメージした「穏やかになる」作品だった。作品の外側も内側も見せる必要がある鉢を作り続けるが「難しい分、面白い」。釜から出して「これは」と思う作品はほとんどないという。
○…7年前、全陶展で文部科学大臣奨励賞を受賞した後から公募展で結果が出なくなった。「今思えば、人に良く見られたいという欲があったのかも」。自分のスタンスを崩さず「穏やかになる」作品作りを心がけた。橋などの建物はもちろん、車を運転すれば、道路のカーブも作品の曲線を出す際の参考になる。「中に吸い込まれていくイメージ」を作品で表現したいという。
○…今年2月からは自宅で陶芸教室を開始。14人の生徒を抱える。「土を触ることは人間の本能。穏やかになれますよ」と陶芸の魅力を多くの人に伝える。息抜きは子どもと行く海釣りと家族で訪れるスーパー銭湯。業界ではまだ若い47歳。「公募展にどんどんチャレンジしたい」。これからも陶芸界に穏やかな風を送り込もうとしている。