〈連載〉さすらいヨコハマ⑤ 県立図書館を市役所跡に 大衆文化評論家 指田 文夫
1964年に石原慎太郎、浅丘ルリ子、二谷英明が共演した日活映画『赤いハンカチ』。87年7月に石原裕次郎が亡くなった時、有線放送で一番のリクエストが映画の主題歌で同名の曲だった。
映画の中で、裕次郎の過去の冤罪事件を調べるため、ルリ子が図書館で新聞を読むシーンがあり、紅葉ヶ丘の県立図書館で撮影されている。また、当時、野毛山遊園地にあった観覧車が出てくるなど、大変に貴重な映像になっている。
その県立図書館の「存廃」が問題になっている。2年前、県が緊急財政対策として、紅葉ヶ丘の図書館での閲覧をやめ、貸し出しは市町図書館を通じて行い、県立川崎図書館を紅葉ヶ丘に統合すると発表。これに対し「神奈川の県立図書館を考える会」(主宰・岡本真)など多くの方から疑問が出され、昨年12月、黒岩知事は県議会で紅葉ヶ丘は再整備してこれまで通りとし、川崎図書館は、かながわサイエンスパーク(KSP)に移転すると答弁した。
一見、これで良かったように見えるが、私は県立図書館を紅葉ヶ丘の急坂の上に再度作ることに反対したい。高齢化時代の今日、バリアフリーに反する場に整備することに問題がある。もともと同じ文化施設とはいえ、図書館と音楽堂、青少年センターはほとんど有機的な関連性がない。つまり、図書館が「紅葉ヶ丘文化センター」の一つとして、あの丘にある必要はないのである。
大規模改修不要
そこで、2020年までに現在の関内から北仲通りへの移転が計画されている横浜市役所の跡に県立図書館を移転させてはどうか。市庁舎は耐震補強済なのだから、大規模な改修をせずに県立図書館にできる。では、県立図書館の跡地利用はどうするのか。現在の市民の文化・芸術活動で一番ニーズの高い音楽、演劇、ダンスなどの練習の場にすれば、前川国男の設計に大きな手を加えることなく、音楽堂、青少年センターとの連携も深めることができる。県立川崎図書館も川崎市庁舎などの建て替えもあるので、KSP以外の場所に整備すれば良い。
いずれにしても、神奈川県の主導の下、横浜市、川崎市との緊密な協力によって県立図書館の一層の発展を実現していただきたいと私は思っている。
(文中敬称略)
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