〈連載〉さすらいヨコハマ⑫ 小津安二郎と横浜 大衆文化評論家 指田 文夫
作品登場は少数
松竹の映画監督・小津安二郎は、当初は蒲田に、1936年以降は大船と、撮影所が近いため、横浜で遊んだようだが、映画に出てくるのは、そう多くない。
はっきりと分かるのは、33年の田中絹代主演のサイレント映画『非常線の女』で、最後に田中と愛人の岡譲二が逃亡する場所は、外人墓地である。戦後の作品では、遺作62年の『秋刀魚の味』で、笠智衆は工場地帯に勤務しているが、横浜かは明確ではない。川崎球場での大洋戦のテレビ中継が出てくるので、川崎を暗示しているようにみえる。
本当に横浜はないのかと探すと、あった。『東京暮色』で、藤原釜足の中華料理屋への道は、大船駅近くの元の国鉄工場へ行く、今もあるガードで撮影された。厳密には、鎌倉市域だが。
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