母乳育児支援コラム25 抱いて、見つめて、話しかけて 保健師 朝倉 きみ子〈動物のお母さんから学ぶ〉
旭山動物園の小菅正夫園長が語る『命のメッセージ』(竹山書房)という本があります。この中には動物たちの生き生きとした様子が書かれています。
ホッキョクグマのユキは経産婦で今回は双子を産みました。生まれた2頭は大きさにも運動能力にも大きな差がありました。1頭はお母さんにくっ付いて泳ぎも潜りもどんどん覚えるのに、もう1頭はいつまで経っても水に入ることさえできず、陸から寂しそうに見ているだけでした。ユキの育児は、子どもが自分から泳がない時はその子どもをプールに落としていました。それから自分が入って助け、前足で作った輪の中で泳がせ、泳ぎを教えていたのですが今回は違いました。いつまでもじっと見守っているだけでした。
遺伝的に異常があるのではないかと園長は考えるようになったそうです。検査をしようかと考えるようになりました。ある時、2頭が陸でじゃれて遊んでいたのですが、プールに落ちてしまいました。それまで寝ていたユキはすっと起きて、水の中に入って小さい方を抱えたのです。それはそれは素早い動きでした。そして、もう1頭の時と同じように泳がせたのです。
待って育てる
その後はお母さんが水に入ってその子を呼ぶと、一度水に入ることができた子グマは、お母さんがいるのを見て安心して水の中に飛び込んでいきます。ユキは少しずつ泳ぎや潜りを教えました。こうして1年経ったら、兄弟は同じように育ちました。大きい子は落としても大丈夫だけど、小さい方はうまくいかないと判断し、時期が来るまで待とう思っていたのだと思います。(小菅園長の言葉より)
人間の場合も発達が遅かったり、赤ちゃんの体重が少ないと周りから否定的な言葉をよく言われますね。ホッキョクグマのユキは本当にいい母親だと思います。「待つ心」を持つことはとても大切ですね。私たちも見習いたいところです。
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