〈連載〉さすらいヨコハマ⑰ 小津安二郎と原節子 大衆文化評論家 指田 文夫
昨年、私は『小津安二郎の悔恨』(えにし書房)を出した。小津の本を出したというと、必ず聞かれるのが「小津と原節子は関係があったのか」である。
結論から言えば、私は、二人はまったく関係なかったと思う。理由は二つ、1903年と1920年生まれの17歳の年の差。さらに、小津には戦前、戦後、そして晩年と常に愛する女性がいたからである。
その一人が、村上茂子で、名作『東京物語』で笠智衆・東山千枝子の夫妻が行く熱海の旅館の外で、演歌師の一員としてアコーディオンを弾いている女性である。
では、なぜ小津と原節子には、様々な噂があったのだろうか。それは、小津が日記に「このところ原節子との結婚話しきり」と自嘲気味に書いているように、松竹の宣伝部が流した噂話が元に違いない。
(文中敬称略)
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