〈連載〉さすらいヨコハマ⑱ もう一つの卒業式 大衆文化評論家 指田 文夫
満開だった大岡川の桜はほぼ散ってしまった。桜が出てくる名画と言えば『花影』(1961年、川島雄三監督)、『けんかえれじい』(66年、鈴木清順監督)、『細雪』(83年、市川崑監督)などがあり、主人公の別れのシーンの背景になっている。私たち日本人にとって、桜は別れの象徴として印象付けられている。
南区には、在住外国籍中学生の学習支援教室があり、横浜市国際交流協会が浦舟町のみなみ市民活動・多文化共生ラウンジの中で行ってきた。私も昨年から学習支援ボランティアとしてお手伝いしているが、3月15日に同教室の修了式が行われた。
教室では中学生33人が学んでいた。今春に3年生11人が卒業し、無事に高校へ進学した。私が担当していたI君も希望の県立高校に合格し、4月から高校生になった。
日本を代表する監督小津安二郎の映画は、人生の別れを描いていると言われている。だが、私は別れを描くことを通じ、同時に新たな出会いを示唆しているのだと思う。別れがなければ、次の出会いは訪れないのだから。 (文中敬称略)
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