〈連載〉さすらいヨコハマ⑲ 映画の中の市電 大衆文化評論家 指田 文夫
1972年4月1日、私は横浜市に入ったが、前日の3月31日に横浜の市電が廃止された。同年12月16日に地下鉄が上大岡―伊勢佐木長者町間で開通。当初は赤字だった地下鉄が近年では黒字基調となっているのは大変に喜ばしい。
今から考えればとても信じ難いが、横浜市電は黒字で、一般会計に余剰金を納入していた時代もあった。戦後の1950年代のことで、その後の乗用車利用の増大で急速に赤字になったのである。
1961年の篠田正浩監督、岩下志麻、川津祐介の松竹映画『わが恋の旅路』は、横浜が舞台の恋愛劇で、重要な場面として市電の内部と花園橋(現在の横浜スタジアム付近)電停を川津が降りて病院に急ぐシーンがある。
日活には、横浜を舞台にした作品が多数あるが、市電の登場は少なく、鈴木清順監督の『港の乾杯・勝利を我が手に』で、元町―麦田町間の山手隧道周辺が出てくるのが唯一だと思う。 (文中一部敬称略)
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